幸せのバトンを受け取った幸せな気分で、土曜の夜は、いつものヨットメンバー、Baystarクルー達との忘年会である。
場所は、心斎橋のおしゃれなイタリアンと言いたいところだが、まさかのカプリチョーザでもジョリーパスタでもなく、なんとサイゼリアである。
いい年のおっさんがサイゼリアで格安のイタリアンをあてに酒を飲む。
なかなか、ありえないこのシュチエーションが、恥ずかしくもあり斬新で面白いことこの上ない。
最初に、この斬新でエコノミーなファミレス飲みを提案したのが、何を隠そうこのわたくしなんだけど、いまも高校生体育会系並みの食欲持続しているおっさん達にとって、このスタイルが気に入られてしまい、今回の忘年会となった次第である。
サイゼリア。
下手な居酒屋よりも、はるかに上質ではあるし、値段通り一品の量が少し少な目なので酒のあてには丁度いい。
ここのお気に入りは、一番搾りの生ビール。
何故かわからないが、ここの生ビールは普通の居酒屋の生ビールよりもずっと美味しく感じるのである。
ワインもボジョレーヌーボーのようなフレッシュな味わいがあり、コクは無いがけっして不味くはない。
ピザはもう少し頑張って欲しい気がするが、パスタはなかなか頑張っている。
たとえばイカスミのパスタは、サイゼリアと言わなければ専門店と区別できる人はそう多くはいないだろう。
人気のミラノ風ドリアとグラタンの完成度はなかなか高い。
体育会系のメンバーたちは、この高コスパイタリアンを次々と平らげていく。
海の男たちの忘年会とは、いささか大げさなタイトルではあるが、若い時代にディンギーやクルーザーを一緒にやってきた仲間なので嘘偽りはない。
我々の忘年会は、現在から過去、過去から現在そして将来へのタイムトリップである。
ヨットのスキッパー、ヘルムスマンというのは、漁船では船頭、大型船では船長にあたる。
一見、偉そうな感じではあるが、少しでも失敗すればクルー全員からののしられるといったおおきな罰ゲームが付いてくるので、この立場がいいのか悪いのかよくわからない。
こうしたスキッパーの役割は、この忘年会でも暗黙的に引き継がれているようで、このタイムトリップの船長をまかされているようである。
まず、自分自身の近況をサクっと報告し、メンバーにはインタビューのように近況報告を聞きだし、忘年海の航海がはじまる。
昔へのタイムトリップがはじまるとどういう訳か、みんなの顔が当時の顔に見えてくるからなんとも不思議なものである。
何度も忘年会や飲み会をやっているので、同じ話が何回も出てくるのは仕方ないことではあるが、忘れているのか大人なのかそんなことは全く気にせず、爆笑の渦へとどんどんヨットは引き込まれていくのである。
とくに、レースやサバイバルなクルージングの話は大いに盛り上がる。
はじめて、470に初心者と乗って、レースに出たときのことである。
すばらしいスタートを切り、トップ集団で上マークを回わり、きれいにスピンを揚げ、念願のトップにたったまではあまりにも出来すぎであった。
そんな、しあわせは長くは続かない。
ジャイブの練習は、時間がなかったので一度もしていない。
当然、ジャイブはできない。
我が470はスピンをあげたまままっすぐと琵琶湖を疾走する。
我々の目指すゴールは、ヨットハーバーである。
帰港1着は誰からも表彰されることはないが、帰港一番のお昼のカレーライスは美味かった。
いつも8月に行われる西宮のクルーザーレースのことである。
微風の中、上マークへ向かうヨットはひしめき合っていた。
突然クルーが小便をしたいから船内のトイレに行きたいと言い出した。
しかし、ここは戦場である。
「船尾に向かって放出せよ!推進力になれ!」
わたしは、クルーに的確な指示を出した。
友が島クルーズでは、こともあろうに船内焼き肉パーティーを行った。
これぞ、焼肉艇である。
ワインを飲みすぎたわたしは、酔いをさましに、ついでに船尾でオシッコをして、船首ハッチから船内へ入ろうとしたとき
あやまってそのまま船内に落下してしまった。
このとき、3針は縫うくらいの傷を負っていた。
親友のクルーが、一言言った。
「大丈夫か? サビオでも貼っとけや!」
クールな一声は、痛みの中、自分の中では大爆笑であった。
あんなこと、こんなこと。
話は尽きない・・・
そんなこんなで、4時間があっという間に過ぎてしまう。
来年、恒例ディンギーを8月の盆休みにやろうということで
今年も海の男たちの忘年会は終わった。