拙者の名は、足利猛。 人は拙者をモウさんと呼ぶ。
拙者も人の子、年に一度だけだが誕生日がある。
この年になると祝ってくれる人間も少なくなり、誕生日に喜びを感ずることもない。
拙者 可哀想な年寄りなのである。
あ~あ
ベンジャミンバトンのようになれればなぁ。
先日、この可哀想な年寄りのバースデイを祝ってやろうということで、長年の友から食事に招待された。
彼女は、神戸生まれの神戸育ち生粋の神戸っ子である。
神戸のことなら何でも知ってる。
歩くルルブ(神戸版)とは彼女のことなのだ。
だから、このルルブの選ぶ店には間違いが無い。
今回ルルブが選んだ店は、元町から歩いて10分くらいのところにあるE.H BANKという店である。
この店 名前のとおり昔、銀行だったそうである。
可哀想な年寄りと、ルルブは、世間話をしながらテクテクと歩いていくと、いかにも重厚な石造りの建物に到着した。
木製でとても趣のある大きな扉こういうのは、拙者の趣味である。
扉というより、門のような扉である。
この大きな扉の前に立つと不思議なことに、この扉が拙者にこう語りかけた
『可哀想な年寄りよ、中に入りなさい』
ルルブには聞こえなかったようだ。
年寄りの空耳かもしれない。
扉に言われなくても、ルルブが予約しているからなぁ。
それに普通は『いっらしゃいませ』だろ! 礼儀知らずめが! と心の中で呟いた。
店に入ると
広い空間が我々を包みこんだ。
今度は、『いっらしゃいませ』と、とても感じのいい女性スタッフが迎えてくれた。
扉の野郎とは大違いである。
接客業とはこういうものである。
この店 気に入った!
奥のテーブルに案内された可哀想な年寄りとルルブはコース料理と白ワインのボトルをチョイスした。
凄い感激こそ無かったが、しっかりした味付けに好感がもてる。
最後はデザートで締めであるが、プレートの上にはデザートと3本のローソク、happy birthdayの文字が飾られていた。
イキな計らいである。
可哀想な老人は、ついにベンジャミンバトンになった。
3歳のバースデーだった。
ありがとね ルルブ&お店の人!